人生を大きく転換させる

徳川光圀

きょうは「水戸黄門」で有名な第ニ代水戸藩徳川光圀(とくがわ みつくに、幼名:千代松)の誕生日だ。
1628(寛永5)年生誕〜1700(元禄13)年逝去(72歳)。

水戸城下(茨城県)柵町の三木之次(みき ゆきつぐ)という家老の屋敷で生まれた。水戸藩徳川頼房(家康の11男)の3男で家康の孫にあたる。事情があって5歳まで身分を隠して三木夫妻に養育された。

6歳のとき、長兄 頼重(よりしげ)を越えて(次兄は幼いとき死亡)、世継ぎに決められ、江戸小石川の水戸邸へ移り、実父のもとで武士的教育を受けた。9歳で元服し光国と言った。のち国を圀と改めた。

15〜6歳のころから、歓楽街を放浪したり、遊びに興じていたが、18歳のとき、ふと『史記』(前漢司馬遷が書いた歴史書)の伯夷伝(はくいでん)を読み、深く感動し、数々の誓いを立て、名君への道を歩き始めた。
第一 兄を越えて「世継ぎ」となったことについて、これまでの態度を恥じ、
  兄の子を養子にして跡を継がせる。
第二 読書学問が自分の人格の確立にどんなに重大であるかを知り、
  生涯学問に専心し、人に対する思いやりの心を深める。
第三 史記にならって日本の歴史を編集する。
第四 日本の国柄を守るために、君臣の大義を明らかにする。

頼房が没した後、34歳で第二代水戸藩主となった。庶民が深刻な給水難に苦しんでいるのを知ると、当時としては最高技術水準を誇る「笠原水道」を敷設し、また、寺社の移転と整理、家臣の共同墓地の設置、和紙の専売実施など多くの改革に取り組むなど藩政に尽力し、藩内外から名君と仰がれた。また、儒学を奨励し、「水戸学」の基礎を築き、尊王思想を鼓吹した。

さらに、藩内の改革にとどまらず、蝦夷地と交易するために巨船「快風丸」を建造し、蝦夷探検も行っている。
また、日本でも『史記』のような立派な歴史書があるべきだと考え、全国から優れた学者を編纂するための支局「彰考館」に集め、「大日本史」の編さんに努めた。

この事業は代々の藩主に受け継がれ、編纂事業が完了し、「本紀」「列伝」「志」「表」の全てが揃い合計397巻と目録5巻が完成するのは250年後の1906(明治39)年だった。
大日本史を編集したときに、歴史編纂をした人々を「史臣」といい、彼らは全国各地に史料を求めて旅をした。

1690(元禄3)年、長兄の松平頼重(よりしげ:高松藩藩祖)の子である綱條(つなえだ)を養子として藩主とした。光圀は隠居して藩主の地位を退くと、自分でも畑を耕したりして、近所の農民たちと親しく接した。
晩年は「西山荘」(常陸太田市)に隠居した。諡名(おくりな:死後にその徳をたたえて贈る称号)を義公(ぎこう)としてたたえられた。

徳川光圀は、青年時代「不良少年」として、遊びまくっていたようだが、「世継ぎ」に決まり、周囲はちやほやと持ち上げるが、内面的には大きな不安があり、そのやり場に困っていたような気がする。そのような時、『史記』に出会い、心の拠り所としたのではないか。

光圀が『史記』によって決意した項目に、「読書学問が自分の人格の確立に・・・」とあるように、本は人生を大きく転換させることがある。素直な心で本に接し、その内容について語ることができる友がいれば、人生それ以上幸せなことは多くない。

水戸黄門★
光圀といえば黄門様だが、黄門と言う呼び名は光圀に与えられていた官名・中納言唐名。特に講談によって、諸国を漫遊し悪代官を退治するイメージが広まった。

黄門こと光圀は、「大日本史」の編さんの大事業に取り掛かり、史臣が全国各地に史料を求めて旅をしたため、これが後に「水戸黄門漫遊記」として脚色された。本人は、実際には諸国を漫遊しことはなく、鎌倉より西へ行ったことがなかった。

助さん・格さん、は実在の人物で、光圀が大日本史を編集したとき仕えた史臣で、優秀な儒学者だった。
 助さんは、佐々十竹(ささ じっちく・助三郎)(1640〜1698)
 格さんは、安積澹泊(あさか たんぱく・覚兵衛)(1656〜1737)

光圀は「天下の副将軍」とも言われているが、この副将軍という役職は幕府にはなかった。水戸藩主は、他の大名と異なり、老中などの幕府要職者と同様に参勤交代をせず江戸に常住すること(藩主定府)と定められていた。これは危急の際の徳川一門の補佐役の意味があった。そのため、いつのまにか副将軍と呼ばれるようになった。

最初にラーメンを食べた日本人とも言われているが、真偽の程は不明。

徳川光圀のビデオ
  天下の副将軍水戸光圀 徳川御三家の激闘 6巻セット [VHS] 


徳川光圀に関する本
  水戸黄門―江戸のマルチ人間・徳川光圀 (中公文庫)
  天下の副将軍 徳川光圀―水戸黄門 (講談社 火の鳥伝記文庫)
  徳川十五代の闇史―家康・光圀・家光 江戸「怨の巻」 (プレイブックス)
  水戸徳川―光圀、斉昭の残影を求めて (Bee books)