世界を変えている

レイチェル・カーソン

きょうはアメリカの生物学者で環境問題を告発した レイチェル・カーソン(Rachel Louise Carson)の誕生日だ。
1907(明治40)年生誕〜1964(昭和39)年逝去(56歳)。

米国ペンシルべニア州の田舎町スプリングデールの農場主の娘として生まれた。幼いころから自然に興味を抱き、巻き貝の貝殻を耳にあててまだ見ぬ海の音を想像していた。また、本を読むのが好きで、作家になることを夢見て、懸賞創作に応募し受賞したこともある文学少女でもあった。

ペンシルベニア女子大学に入学し英文学を専攻したが、2年次に受講した生物学に魅了され、専攻を生物学に変更した。卒業後マサチューセッツ州ウッズホール海洋生物研究所で研修を受ける奨学金を得て、はじめて海と出合った。

そして、ジョンズ・ホプキンス大学大学院で海洋生物学の修士課程を修了後、研究生活を続けていたが、父の死によって、母と姉の遺児である2人の姪との生活を支えるために、1936年29歳で商務省漁業水産局に就職し、政府刊行物の編集に従事した。1940年に内務省魚類・野生生物局に移り、野生生物とその保護に関する情報収集にあたった。
いつの間にか彼女のなかで科学と文学は合流し、公務員生活を続けながら再び作家への道をたどるようになっていった。雑誌「アトランティック・マンスリー」にエッセイ「海の中」を掲載する機会を得て、これをふくらませて『潮風の下で(Under the Sea Wind)』を発表。1951年に発表した『われらをめぐる海((The Sea Around Us)』がベストセラーとなり、生物ジャーナリストとしての地位を確立、1952年に45歳で退職し文筆活動に専念するようになった。

次いで『海辺(The Edge of the Sea)』を発表した。一連のベストセラーは、海と海洋生物に関するもので、抒情的な美しさに満ちた文学性の高いものだった。
この頃、メイン州ブースベイ郊外の森の中に海の見える別荘を建て、夏の間、姪たちと過ごすのを楽しみにしていた。

あるとき、作家としての名声を確かにしたレイチェルのもとに、友人から1通の手紙が舞いこんだ。役所が殺虫剤のDDTを空中散布した後に、庭にやってきたコマドリが次々と死んでしまった、という内容の手紙だった。

この友人からの手紙をきっかけに、当時広く使用されていたDDTをはじめとする殺虫剤、除草剤、その他の化学物質が環境や生物に世代を超えて与える影響を告発した『沈黙の春 (Silent Spring) 』の執筆にとりかかった。
執筆中に、癌に冒され死期が迫っていることを知り、文字通り時間との闘いのなかで、膨大な資料の山に埋もれ、4年の歳月をかけ完成した。

1962年55歳の時に発表した『沈黙の春』は、化学物質による自然破壊に警告を発した先駆書となった。そして米国政府にまでその衝撃波が伝わり、ついに時の大統領ケネディも化学物質がもたらす環境汚染問題の調査に乗りだすことになった。また1970年の環境保護局設立のきっかけにもなり、アメリカの環境政策に重要な影響を与えた。

沈黙の春』は、環境汚染問題に火をつけ、ありとあらゆるマスメディアがそれを取り上げるようになり、 その後の全世界に大きな影響を与えた。後に「歴史を変えることができた数少ない本の1冊」と称されることになった。
当時、合成化学物質の蓄積が環境悪化を招くことはまだ顕在化しておらず、その啓蒙活動を行った彼女の意義は大きかった。

そして、世界中で農薬の使用を制限する法律の制定を促すと同時に、地球環境への人々の発想を大きく変えるきっかけとなった。
彼女が発した警告は、今日でもその重大さを失わず、そればかりか、さらに複雑に深刻になってきている環境問題への彼女の先見性を証明している。

死に際しても、それを自然の営みのとして静かに受け入れ、1964年4月14日、メリーランド州シルバースプリングの自宅で56歳の若さで世を去った。姪たちと自然のなかで過ごした経験をもとに書かれた『センス・オブ・ワンダー』は彼女の死後、友人たちが彼女の夢を果たすべく原稿を整え、1965年に出版された。

レイチェル・カーソンは、最初は作家をめざしていたが大学時代に生物学に興味を持ち方向転換している。しかし、作家をめざしたほどの文章力が、後に環境問題を告発した作品の大きな力になっている。そしてそれが世界を変えている。もしレイチェルが単なる作家になっていたら、世界はもっと汚染されていたかもしれない。

企業においても、実施案件や結果報告を解りやすく表現する能力は、今後もっと重要視されるだろう。また営業などでのお得意先へのプレゼンテーションにおいては、商品の優秀さに合わせて、その表現センスが他社に差をつける要因になる。


レイチェルのことば
  「人間だけの世界ではない。動物も植物も一緒に住んでいるのだ」
  「春が来ても自然は黙りこくっている」


レイチェルのDVD
  センス・オブ・ワンダー [DVD] センス・オブ・ワンダー [DVD]  


  
レイチェルの本
  沈黙の春 (新潮文庫)
  われらをめぐる海 (ハヤカワ文庫 NF (5))
  センス・オブ・ワンダー
  失われた森 レイチェル・カーソン遺稿集
  『沈黙の春』の40年―レイチェル・カーソンが問いかけたもの
  科学者 レイチェル・カーソン (こんな生き方がしたい)
  レイチェル・カーソンの世界へ (かもがわCブックス)
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