私の人生はそれに尽きる

大川功

きょうはCSKを創業した 大川功(おおかわ いさお)の誕生日だ。1926(昭和15)年生誕〜2001(平成13)年逝去(74歳)。

大阪府枚方市に生まれた。1948(昭和23)年 早稲田大学専門部工科電気科を卒業した。肺疾患のため8年間闘病生活をしたが、新薬の発見により奇跡的に治癒できた。

大川は情報処理機械の黎明期1962(昭和37)年に「IBMのパンチカードシステムの講習会」に出席し、コンピュータとの運命的な出会いに“予兆”を感じた。パンチカードシステムによる経営の合理化、経営管理の近代化、さらにこのような情報処理マシンの将来性を確信した。

そして1968(昭和43)年42歳のとき、資本金500万円、社員わずか10名で、大阪の地にコンピュータのアプリケーション・ソフトウェアの開発を中心とするコンピュータサービス株式会社(CSK)を設立した。当時は名もなく、人も、金も、技術も、信用も何もない、まさにないないづくしの発足で、有ったのは無から有を生ずる知識と、会社をつぶしてはならぬという執念だけだったと言う。
「人が全て」、「人生観=経営観」、「めぐり合いを大切に」、「技術の前に人ありき」、「人生は感動の歴史で綴れ」と言う大川は「人が事業の基本である」という理念を常に持ち続け、実践した。早くからネットワーク、人工知能、データベース等の分野における専門特化した研究開発・事業等に着手した。
1982(昭和57)年 56歳の時、日本のソフトウェア会社では初めて株式上場を果たした。

世の中の大きな流れの中での新しい技術の開発や環境の進展に対して、積極的な研究意欲を持っていた。たとえば、1983(昭和58)年に通信衛星CS2を利用する郵政省のパイロット計画が浮上した際、いちはやくこれに参加した。

情報産業の育成についても多くの業績があり、1983(昭和58)年には「社団法人 日本情報通信振興協会」の発起人としてその副会長に就任し、電気通信の自由化について強く提言を行い、VANサービスの普及に努めるなど、我が国のこの分野における民業化の端緒を開いた。

また、1986(昭和61)年に私財を投じ「財団法人 大川情報通信基金」を設立して、主な大学等の研究者に助成を行い、この方面の研究開発に貢献した。

1984(昭和59)年58歳の時にセガ・エンタープライゼス社の経営を通じて、時代の要請の強いエンターテイメント事業にも参加した。1990(平成2)年64歳の時セガエンタープライゼスの会長になった。死の直前2001(平成13)年3月期、セガドリームキャスト事業撤退で800億円の特別損失を計上するのに対して850億円の私財を提供した。

1995年にはベルギーのブリュッセルで開催された「G7情報通信閣僚会議」に民間代表の一人として参加、この席上で「GII(グローバル インフォメーション インフラストラクチュア)ジュニアサミット(子供サミット)」の開催を提唱し、同年秋には運営委員長となって、これを東京で開催した。

1996(平成8)年70歳で早大名誉理学博士になった。
彼は、複合立体的な情報通信産業グループを早くからつくりあげ、情報化社会の向上、技術の開発、環境の進展へ向けての多大なる貢献をし、我が国の高度情報化社会の推進役としての大きな使命を果たしてきた。IT企業への投資に熱心で、ベンチャーインキュベーターの草分け的存在だった。1996(平成8)年から1998(平成10)年までニュービジネス協議会会長も務めた。

大川は、自身の人生についてこう語っている。
「新しい産業には必ずその予兆がある。その予兆を逃さず捕らえ、これを命掛けで事業化しようとする人に対して、天は、《時流》という恩恵を与え、そして《使命》という社会的責任を負わせるのだと思う。私の人生は、それに尽きる

大川功は、死ぬ直前に、ゲーム機業界から撤退するセガのために、私財850億円を提供するが、どのような気持ちだったのだろうか。無念で悔しかったのだろうか、安堵し晴々しただろうか。

人は最期に、「いろいろあったけど、まあまあの人生だった」と満足できることが最高だと思うが、企業人としてのいろんな区切り、いわゆる異動、転勤、転職、退職などにおいて、「いろいろあったけど、まあまあの仕事ができた」と言えるようになりたいものだ。


大川功のことば
  「インターネットの時代に、個人が露出する場をバーチャルな世界に作る」
  「第2の胃である脳を満足させる」
  「ネットワークゲーム・サービスプロバイダーとして世界一を目指していく」


大川功に関する本
  予兆―情報世紀をひらく
  超成長企業CSK―複合立体情報サービスの全貌
  ゲーム屋のお仕事―それでもゲーム業界を目指しますか?
  セガ・コンシューマー・ヒストリー (ファミ通Books)
  ゲームの話をしよう (ファミ通Books)
ゲームの話をしよう (ファミ通Books)セガ・コンシューマー・ヒストリー (ファミ通Books)ゲーム屋のお仕事―それでもゲーム業界を目指しますか?