うまく関連させ

きょうは読売新聞社主、読売巨人軍・日本テレビを設立した 正力松太郎（しょうりき まつたろう）の誕生日だ。１８８５（明治１８）年生誕〜１９６９（昭和４４）年逝去（８４歳）。

富山県射水郡大門町の土建請負業の旧家に生まれる。１９０３（明治３６）年 第四高等学校入学。同級生に河合良成（小松製作所会長）、品川主計（巨人軍代表）などがいた。１９０７（明治４０）年 東京帝国大学法学部独法科入学。河合、品川のほか、重光葵（外相）、芦田均（首相・外相）、石坂泰三（経団連会長）などが同級だった。

大学で柔道に夢中になり卒業後の進路に困り、官庁として一番下のクラスになる警視庁にかろうじて入った。特高(特別高等警察)や関東大震災後の混乱、共産主義者の活動の弾圧、また米騒動の鎮圧などに関わった。官房主事兼高等課長となるが、１９２３（大正１２）年１２月２７日の虎ノ門事件（難波大助による摂政 裕仁親王−後の昭和天皇−の狙撃事件）を防げなかった責任を取り警察を辞職した（事実上解任）。
１９２４（大正１３）年３９歳の時、東京市長 後藤新平の仲介で、当時経営危機に陥っていた「読売新聞社」を買取り社長に就任した。警察の幹部が社長になるということで、それに反発して多数の記者が辞職した。彼はお上の御用新聞への道ではなく、徹底的な新聞の大衆化をめざした。いわゆる「三面記事」に力を入れ、センセーショナルな見出しを踊らせて、新聞の購読者をどんどん増やし、朝日・毎日と並ぶ大新聞にした。

１９３４（昭和９）年４９歳の時、プロ野球球団・大日本東京野球倶楽部（現 巨人）を創設し、日本にプロ野球を紹介した。そしてアメリカの大リーグのチームとの試合で大いに湧かせた。
１９４４（昭和１９）年５９歳で貴族院議員となった。

戦後、戦争の報道などに関して責任を問われてＡ級戦犯とされ、巣鴨刑務所に収監された。１９４７（昭和２２）年６２歳の時に釈放され、１９５１（昭和２６）年に追放解除になり、読売新聞社に復帰した。その後大阪読売新聞を発行、読売新聞を全国紙として展開した。「読売新聞中興の祖」として「大正力（だい−しょうりき）」と呼ばれている。

１９５３（昭和２８）年６８歳の時、日本で最初の民間テレビ局である「日本テレビ」を創設。彼が民放という事業形態を運営するために考え出したのが街頭テレビで、スポンサーのＣＭ広告料でテレビを運営する手法だった。
当時はテレビ受像機は平均的なサラリーマンの月収の１年分くらいもする高価なものだった。当然普及台数も少なく、そこに広告を流しても効果はそんなに出ないと思われるが、彼が注目したのはプロレス中継だった。街頭に誰でも自由に見れるテレビを設置し、そこでプロレス中継をやって、それにＣＭを流す。これは絶大な効果があった。このテレビの事業は追放解除になる前から準備を進めていたようだ。

正力松太郎は、いわばメディア経営者であり、この人の功績は読売新聞を日本一の部数に仕立て上げたというよりも、日本の民放テレビを作った点が評価されている。彼は、テレビＣＭを通じて商品情報を消費者に提供し、メーカーが創り出す製品を消費者に浸透させるメディアを作り出した最大の功労者である。
正力と松下幸之助の二人に加え、元電通社長の吉田秀雄を理解すれば、高度成長期の日本の広告業界は掴めるとまだ言われている。

１９５４（昭和２９）年６９歳の時、読売新聞社社主として経営の第一線から退き、翌１９５５年（昭和３０年）に衆議院議員に当選。原子力行政の推進に力を入れ、原子力委員会の初代委員長、新設された科学技術庁の初代長官に就任した。

正力松太郎は、一人でいろんな顔を持っていた。柔道十段の柔道家、警察官僚、大衆新聞社の経営者、「プロ野球の父」、「民放の父」、プロレスブーム生みの親、国会議員、「原子力の父」。プロ野球初代コミッショナーでもあり、柔道やプロ野球に彼の名前を冠した大会・賞がある。
それらをうまく関連させ、付加価値をつけて発展させているのがすばらしい功績となっている。

企業においても、いろんな顔を持った人はいるが、どんなことでもそれらが全く関連が無いということはあり得ないのだが、積極的に関連付けることで、新しいアイデアが生まれてくるものだ。ただし、あれもこれもで、どれひとつとっても中途半端で何ひとつ秀でたものが無いというのは考えものだ。

★正力松太郎 暗殺未遂事件★

正力が読売新聞社に出社してきた所を、日本刀を持った男が襲撃した。
目的は正力への警告の為に、片腕を日本刀で切断することだった。

だが、正力は柔道十段、警視庁でも鍛えている。
咄嗟によけて、腕は切断されなかった。
しかし、首を大きく切られ、その傷口は長さ１５センチ、深さ５センチという瀕死の重傷だった。
出血の量は１リットルもあったようだが、どうにか命を取り留めた。 

正力松太郎の本
　　正力松太郎と影武者たちの一世紀 巨怪伝 上 (文春文庫)、(下)
　　正力松太郎―悪戦苦闘 (人間の記録 (86))
　　大きな夢に挑んだ人―正力松太郎ものがたり (少年少女伝記ノンフィクション)