時代の要求を敏感に   

亀倉雄策

きょうは昭和期を代表するグラフィックデザイナー 亀倉雄策(かめくら ゆうさく)の誕生日だ。
1915(大正4)年生誕〜1997(平成9)年逝去(82歳)。

新潟県西蒲原郡吉田町に生まれる。生家の環境が芸術的な雰囲気に囲まれたものであり、彼は早くから芸術の方面に才能を発揮していた。中学生のころ、近代ポスターの父と称されるカッサンドルの作品、パリの百貨店・ギャルリ・ラファイエットのポスターの図版を見てグラフィックデザインに進む決心をした。中学を卒業した彼は、独力でデザインの勉強をした。

1935(昭和10)年 新進の建築家 川喜田煉七郎の主宰する新建築工芸学院へ入学し、バウハウス・システムによる構成理論、方法論などを学んだ。
卒業後、1938(昭和13)年23歳の時、日本工房に入社した。日本工房は写真家 名取洋之助が1933年に設立し、のちに国際報道工芸と改称、1945年 終戦の一週間後に解散した。この仕事を通じて、亀倉はデザインの基礎をしっかり身につけるとともに、さまざまな人々との出会いなどで次第に力を蓄え、グラフィックデザイナーとして成長していった。
亀倉は、抽象的な曲線を組み合わせて、商品のイメージを具体的に表したものなど、直線と曲線による強いイメージのポスターは、これまでのポスターと比べ格段に新鮮で鮮やかな印象を与えた。今までの絵画的ポスターあるいは図案といったものとはっきり訣別した、日本の現代デザイン誕生のシンボルとも言うべき画期的なデザインポリシーを確立した。

1960(昭和35)年45歳のとき日本デザインセンターを設立した。1962(昭和37)年47歳でフリーになり、亀倉デザイン研究室★EC9E★を創設した。日本にデザインという概念が無かった時代から、原野に道を拓くがごとく活躍。社会におけるデザイナーの地位向上に貢献した。

1964(昭和39)年に開催された東京オリンピックは、単にスポーツだけではなく、いろいろな意味で時代を画するイベントだった。このためのデザイン委員会が設けられ、指名コンペによって亀倉のシンボルマークが決定された。
鮮烈な印象を与えたシンボルマークの作品は1961年に制作し、1962年には陸上競技のスタートダッシュの一瞬を真横から撮った写真を使用したポスターを、翌年には水泳のバタフライの泳者を真正面からとらえた写真を使用したポスターを制作した。どの作品も競技者の力のこもった瞬間を画面に定着させ、激しい息づかいさえ感じさせる。

画面の優れた構図に、激しい動きのある写真を巧みに用いる方法は、この後も亀倉の作品の中にしばしば登場する。亀倉のポスターには写真を効果的に用いたもののほか、幾何学的なデザインによるものも多い。彼はもともと幾何学的表現を好んでいたのだが、戦前のデザインが画家の描いたような絵画風のものを、何の批判もなく用いていたことへの反発もあったようだ。

日本グラフィックデザイナー協会会長、日本デザインコミッティー理事長を務め、1989(昭和64)年デザイン誌「CREATION」を創刊し、責任編集者となった。
代表作には、東京オリンピックポスター、ヒロシマアピールズポスター、 NTTマーク等がある。

亀倉雄策は戦後、1950年以降の日本のデザイン界を、明るい包容力のある個性とリーダーシップで強力に引っ張って来た。時代を象徴する大きなイベントのポスター、時代の要求を敏感に感じて時代をリードしたコマーシャルポスターなど、時代の精神を反映し、時代を作った彼のポスターは、まさに日本のデザイン史と言える。

亀倉のすばらしい作品を陰で支えているものに、インク製造技術、印刷技術、写真技術、デジタル処理技術、紙の製造技術などさまざまな最先端技術がある。これらがうまく噛み合って優れた作品が生かされてくる。

企業においても、たとえばモノづくりでは、営業が受注したものは、設計技術、生産技術、製造技術および品質管理技術などがすべてうまく噛み合って、はじめてお客様に喜ばれる商品を届けることができる。どの工程が欠けてもそれは商品として成り立たないものであり、まさに企業の総合力と言える。


亀倉雄策の作品
    
 東京オリンピック  I'M HERE    Nihon Buyo   Hiroshima Appeals   


亀倉雄策の本
  クリエイション (世界のグラフィックデザイン、アート&イラストレーション)
  クリエイション―亀倉雄策追悼特別号
  曲線と直線の宇宙
  女像(JOZO)
  亀倉雄策 gggBooks 世界のグラフィックデザインシリ-ス゛ 3
  亀倉雄策の直言飛行
  亀倉雄策 1915‐1997―昭和のグラフィックデザインをつくった男
  亀倉雄策のデザイン
亀倉雄策 gggBooks 世界のグラフィックデザインシリ-ス゛ 3