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中山晋平

きょうは童謡作曲家 中山晋平(なかやま しんぺい)の誕生日だ。1887(明治20)年生誕〜1952(昭和27)年逝去(65歳)。

信州下高井郡日野村(現 長野県中野市)に生まれた。少年時代から村祭りの笛の腕前では右に出る者がないほど音楽の才能に恵まれた。1905(明治38)年18歳のとき音楽への希望に燃えて上京し、新劇の指導者で早大教授でもあった島村抱月の門をたたいた。ここで原稿清書などの書生生活をしながら、東京音楽学校(現 東京芸術大学)でピアノと作曲を本格的に学び、1912(大正元)年25歳で卒業した。卒業後は東京都浅草の小学校音楽専科教員をする傍ら作曲を続けた。

1913(大正2)年26歳の時、島村抱月松井須磨子らと「芸術座」を旗揚げすると中山晋平も参加。1914年、芸術座が公演するトルストイの「復活」で松井須磨子が歌う劇中歌を依頼された。
「学校の唱歌でも困るし、教会の賛美歌でも困る。西洋の民謡と、日本の民謡との中間をいったようなものにしてくれ」との注文だった。
晋平は途方に暮れるが、公演の3日前に付点のリズムに特徴のあるメロディがひらめき、「カチューシャの唄」を発表、作曲家として歩み始めた。
「カチューシャの唄」は、新しい感覚の大衆歌謡として当時の人々を魅了し、松井須磨子の歌とともに人気を博した。そして晋平は全国的に名を知られるようになった。以後、「ゴンドラの唄」や「さすらいの唄」など、劇中歌の名曲を次々に発表した。

1918(大正7)年、恩師 島村抱月が急死し芸術座が解散すると、童謡に進出し、野口雨情らとともに童謡運動を展開し、民謡調査の旅に出かけるなど日本の民謡を研究した。1919(大正8)年32歳のとき斎藤佐次郎による児童雑誌「金の船」に童謡を発表するが、当時はまだ童謡の認知度が低く、教員として唱歌を教えるべき立場もあり、萱間三平という変名による発表だったようだ。

1921年の「船頭小唄」では、のちに「晋平ぶし」と呼ばれる「ヨナ抜き音階」の特徴的なメロディ・ラインを確立し、その短音階や4小節4段で完結する歌謡様式は、後の流行歌の主流パターンとなった。1928(昭和3)年41歳からビクターの専属となり、佐藤千夜子の歌で数々のヒットソングを生んだ。
  ヨナ抜き音階:当時は「ドレミファソラシ」の音階を「ヒフミヨイムナ」と呼び、
  その「ヨ」と「ナ」、今の音階でいえば「ファ」と「シ」を抜いたもの。

一方、晋平はモダンで軽快な感覚も持ち合わせており、「肩たたき」「兎のダンス」「証城寺の狸囃子」などはいつ聴いても楽しくリズミックな楽曲だ。
「砂山」「背くらべ」「てるてる坊主」「しゃぼん玉」「こがね虫」などのすなおで親しみやすい童謡に加え、日本民謡の特徴を巧みに生かした『新民謡』と呼ばれる大衆歌謡の「出船の港」「東京行進曲」「東京音頭」など多くのヒット曲を手がけ、日本の音楽界に大きな影響を与えた。作品総数は約3000曲にのぼり、日本のフォスターとも呼ばれている。

中山晋平は、27歳のとき「カチューシャの唄」の大ヒットで作曲家として最初から成功するが、東京音楽学校で学んだ基礎がしっかりしていたことや音楽家になるという信念が確かだったことに加え、やはり人に恵まれていたことも大きい要素だ。また、時代が求めた曲をイムリーに提供したこともあったのだろう。
彼の作った曲が戦争で落ち込んだ日本人の心をどれだけなぐさめ元気づけたか、計り知れないものがある。

企業において、入社直後から一躍抜擢されることはあまりないはずだが、若い時からの業績や態度によっては、若くして抜擢されることもある。
早い昇進が必ずしも良いとは限らないが、若い考え方が企業を活性化し発展に導く可能性が高いことも確かだ。

中山晋平の作品●
カチューシャの唄  島村抱月 作詞
 ♪カチューシャかわいや 別れのつらさ
ゴンドラの唄  吉井勇 作詞
 ♪いのち短し 恋せよ乙女
さすらいの唄  北原白秋 作詞
 ♪行(ゆ)こか戻ろか オーロラの下を
シャボン玉  野口雨情 作詞
 ♪しゃぼん玉とんだ やねまでとんだ
背くらべ  海野厚 作詞  
 ♪柱のきずは おととしの 5月5日の 背くらべ
てるてる坊主  浅原鏡村 作詞   
 ♪てるてる坊主 てる坊主 あした天気にしておくれ
肩たたき  西条八十 作詞 
 ♪母さん お肩をたたきましょう タントン タントン
兎のダンス  野口雨情 作詞  
 ♪ソソラソラソラ うさぎのダンス
こがね虫  野口雨情 作詞  
 ♪こがね虫は 金持ちだ 金ぐらたてた くらたてた
砂山  北原白秋 作詞  
 ♪海は荒海 向こうは佐渡よ すずめ啼(な)け啼け 
証城寺の狸囃子  野口雨情 作詞 
 ♪証(しょう) 証 証城寺 証城寺の庭は ツン ツン 月夜だ
船頭小唄  野口雨情 作詞
 ♪おれは河原の枯れすすき
出船の港  時雨音羽 作詞
 ♪ドンとドンとドンと波のり越えて
東京行進曲  西条八十 作詞
 ♪昔恋しい 銀座の柳
東京音頭  西条八十 作詞   
 ♪ハア 踊り踊るなら チョイト 東京音頭 (よいよい)



中山晋平の本
  てるてる坊主―絵で見る中山晋平の世界
  カチューシャ可愛や―中山晋平物語 (大月CDブック)
  中山晋平 10のメロディ(女声合唱)
  ふるさとの山河を歌の心に―時をこえてうたいつがれる歌の数々・作曲家中山晋平 (PHPこころのノンフィクション)
  中山晋平 (信濃の伝記シリーズ (6))
ふるさとの山河を歌の心に―時をこえてうたいつがれる歌の数々・作曲家中山晋平 (PHPこころのノンフィクション)