裕福な国にしよう   

豊田佐吉

きょうは豊田式自動織機発明、トヨタの始祖 豊田佐吉(とよだ さきち)の誕生日だ。
1867(慶応3)年生誕〜1930(昭和5)年逝去(63歳)。

遠江国山口村(現 静岡県湖西市)に大工の長男として生まれた。小学校を卒業後、父の大工仕事を手伝っていた。内気で一切無駄口はきかず、何を考えているのか分からないようなところがあったため“ムッツリ佐吉”と言われた。夜学舎で勉強し、世の中のためになることをして日本を裕福にしようと考えていたようだ。

佐吉が18歳の時、人生における転機が訪れた。専売特許条例が公布され、日本でも先進諸外国と同様、有益な発明には特許が与えられ、その権利を守れるようになった。それ以前から、国家のことを思い、自分も国家のために役立つ人間になろうと考えていた佐吉は、この専売特許条例の話を聞き、「発明を自分の生涯の仕事にしよう」と決意した。

20歳のとき、大工職の友人と東京へ家出し近代工場見物をした。また軍人を志望しながらも知識欲の旺盛だった佐吉は、大工仕事のかたわら織機改良のため納屋へこもり工夫につとめた。
1890(明治23)年23歳のとき、東京 上野で開催された第3回内国勧業博覧会の見学に行った。そこに出展された機械のほとんどは外国製で、佐吉はそれを見て、ますます国産機械の研究開発への意欲を強く持った。
出品された外国製の織機を見て、当時広く使われていたバッタン織機の改良で同様のものを自力で作ろうと考えた。

そして生産効率と品質の向上を可能にした豊田式木製人力織機を発明し、1891年24歳の時、特許を取得した。彼が最初に自分の発明について報告をしたのは、自分の母親だった。母親は自ら機械を試し、機械の性能がすばらしいものであることを感じ取った。そこで佐吉は母親に、もっとすばらしい発明をすることを誓った。
その後この織機に様々な改良を加え、1895(明治28)年 取り扱いが簡単で効率のよい糸繰返機(かせくりき)を発明、この発明は商業的に大成功を収め、その資金を元に、彼は動力で織る織機の開発に取り掛かった。

1896(明治39)年、動力を利用した日本最初の汽力織機を作り上げた。
その後名古屋へ出て販売会社をつくった。1897(明治30)年30歳で、乙川綿布合資会社を設立して発明した織機を利用した織物工場の経営を始めた。1898(明治31)年、豊田式木製力織機が特許となった。
その後も佐吉はアメリカやヨーロッパを視察し、海外の進んだ技術を採り入れ、自動織機の改良に努めた。1906(明治39)年、より効率良く広幅の布を袋状に織る環状織機を発明、1916(大正5)年 自動織機の特許を取得した。1924(大正13)年に完成したG型無停止杼替式豊田自動織機は当時、世界最高の織機として評価され、彼は“世界の織機王”と言われるまでになった。

工場は、1902(明治35)年に豊田商会、1906(明治39)年 豊田式織機株式会社、1912(大正1)年豊田自動織布工場創立、1914(大正3)年紡績工場創立、1918(大正7)年豊田紡績株式会社創立、1921(大正10)年上海(シャンハイ)で豊田紡績廠創立、そして1926(大正15)年59歳のとき株式会社豊田織機製作所創立、のち豊田グループ企業の基をつくった。

当時、自動織機はすでに欧米で製作されていたが、故障が多く、しかも操作が複雑なため十分に使われていなかった。これに比べ、佐吉は「発明に関しては十分な試験を行って、実用のものとしなければならない」との信念から、試験工場を建設して営業的試験を行うなどして徹底的な品質や性能のチェックを行ったため、欧米の技術者たちから“マジック・ルーム(魔法の織機)”と呼ばれ、高い評価を受けた。

織機ではたて糸の上糸と下糸の間によこ糸を通して織物を織っていくが、佐吉の発明した織機は、よこ糸が無くなった時に自動的に補充し、たて糸が切れた時に自動的に停止する機能を備えており、まさに自動織機であった。この考え方は、のちにトヨタ生産方式のニンベンのついた「自働化」に引き継がれていく。

佐吉が生涯で得た特許権は84件、実用新案は35件にも及ぶ。18歳の時に誓った、「発明」によって、日本の産業を発展させ裕福な国にしようと考え、「発明を生涯の仕事に」を、文字どおり生涯貫いたことがわかる。

現在「KAIZEN(かいぜん:改善)」は世界の共通語になっている。その考え方が日本経済だけでなく、世界の経済を発展させてきたと言ってもさしつかえない。
人類は、この「KAIZEN」の考え方をもとに、科学を進歩させることができたら、より豊かで幸福な生活を送ることができるはずだ。


豊田佐吉のことば
  「障子を開けてみよ。外は広いぞ」
  「研究と創造に心を致し、常に時流に先んずべし」


豊田佐吉の本
  豊田佐吉 (人物叢書)
  豊田佐吉―発明と技術に生きる (講談社火の鳥伝記文庫 (48))
  豊田佐吉 (子どもの伝記全集 26)
  豊田佐吉―新しいおりもの機械を発明した人 (児童伝記シリーズ (32))
  最強トヨタのDNA革命
  障子を開けてみよ。外は広いぞ―トヨタはこの遺伝子でできている
  トヨタ経営の源流―創業者・喜一郎の人と事業 (講談社文庫)
トヨタ経営の源流―創業者・喜一郎の人と事業 (講談社文庫)障子を開けてみよ。外は広いぞ―トヨタはこの遺伝子でできている最強トヨタのDNA革命