素直さと感性が   

蟹江一太郎

きょうはカゴメの創業者 蟹江一太郎(かにえ いちたろう)の誕生日だ。
1875(明治8)年生誕〜1971(昭和46)年逝去(96歳)。
愛知県東海市の農家の長男として生まれた。まじめで働き者であった彼は軍隊でも熱心に勤めを果たしていて、その姿に感心した上官から、軍隊でも使われ始めていた西洋野菜の栽培を勧められ”日本のこれからの農業は付加価値のある野菜を栽培・販売していかなければならない”と教えられた。
服役から戻った一太郎は、1899(明治32)年24歳で、西洋野菜の栽培に着手した。一太郎はトマト栽培に明け暮れ、やがて何とか栽培できるようになり、収穫したトマトを籠に入れて背負い売り歩いた。しかし日本人にとってはなじみの薄い野菜であったため、「青臭い」と敬遠されなかなか売れなかった。売れ残りのトマトの山を前に一太郎は頭を悩ませる毎日だった。
その頃、彼は知人から”西洋でもトマトは生のままで食べるよりも、加工してソースとしてよく使われている”と聞いた。1903(明治36)年28歳のとき、ホテルからソースを取り寄せ、それを真似てトマトソース(現在のトマトピューレー)を作った。そして、ある西洋料理店で使ってもらったところ、「使ってみたい」ということになった。
1906(明治39)年36歳の時、東海市荒尾町に工場を建設し、トマトソースの本格的生産に入った。そして1908(明治41)年、ケチャップの製造を開始した。1914(大正3)年、愛知トマトソース製造を設立。1917(大正6)年、「カゴメ」を商標登録。1963(昭和38)年、カゴメ(株)と改組改称。 
一太郎は軍隊の上司から西洋野菜の栽培というヒントを得ているし、トマトソースのヒントも知人のひとことから得ている。まじめに取り組み頑張ることだけでなく、人の話を聞くときの素直さと感性が後日の成功の裏づけとなっている。
企業においても、人と話をする中でいろんなアイデアが浮かぶことが多い。それは同じ部署の気が合う人だけでなく、業者の人であったり、他部署の人や気の合わない人であったりすることもある。どんな人にも誠意を持って接することで、役に立つ情報が入ってくるきっかけがつかめるものだ。

カゴメの由来★
 トマトを籠の中に入れて売り歩いた一太郎の苦労を忘れないために、その時トマトを入れた籠の目をデザインしたものを商標とした。そして、それを社名にもした。  一太郎は、星を商標にしてスター食品と名前を付ける予定だったが、星の形☆は軍隊の記章として却下され、△を二つ重ねたいわゆる六芒星で再度登録しようとしたが、星ということで許可されなかった。  一太郎は半分自棄になって「これは星ではなく籠目です」と言って、登録が許可されたそうだ。
●トマトの効果●
 ことわざに「トマトが赤くなると、医者が青くなる」とあるように、栄養価の高い健康野菜だ。  「ガン予防」のACE(エース)と呼ばれ、ビタミンA、C、Eが特に豊富。ミネラル、食物繊維がバランスよく含まれてい上に、低カロリーで「ダイエット」にもお勧め。そして今注目を集めているのがトマトの赤い色素の「リコピン」で、抗酸化物質で人間の体に悪影響を与える活性酸素を退治してくれる。そのパワーは、βカロチンの2倍、ビタミンEの1000倍で、ストレス、喫煙、飲酒、紫外線などによる生体の活性酸素の除去、悪玉コレステロールの酸化防止による血管の掃除などに効果的。他にも痴呆の予防、血糖値の抑制効果などの機能がある。  またトマトにはグルタミン酸による「だし」効果があり、イタリア料理の美味しさの秘訣とか。



蟹江一太郎のことば
  「 でんでん虫そろそろ登れ富士の山」


蟹江一太郎の本
  「カゴメ」21世紀への飛躍
  企業を活かす広報戦略―元カゴメ広報室長が明かす企業広報のエッセンス
  世紀転換期の起業家たち―百年企業への挑戦



世紀転換期の起業家たち―百年企業への挑戦



   カゴメの社票(籠目)