守っているだけでは   

自作の暖簾

きょうは世界的な遺伝学の権威 木村資生(もとお)の誕生日であり命日だ。1924年生誕〜1994年逝去(70歳)。
1976年には運のいいものが生き残るという生物進化の新しい原理である「中立説(サバイバル・オブ・ザ・ラッキエスト)」を発表し、国際的な大論争を巻き起こした。これはダーウィンの「適者生存(サバイバル・オブ・ザ・フィッテスト)」に異論を唱えるもので、一時は「地獄の悪魔」にたとえられていたそうだ。
人類のような種の存在は「バクチを打って百万回たてつづけに勝ち続けてきたくらいの幸運」によるものなんだそうだ。
人類はサルの世界の敗者から生まれたそうである。五百万年あまり前、大森林に乾燥化が始まり、樹上で生活していた類人猿の食糧が不足がちになった。森林での食糧探しの上手な類人猿はそのまま樹上生活を続けて子孫はゴリラになった。他方、地上に追い出され食べ物を探すほかなかった負け組みの類人猿が人類に進化した。
地表生活では好き嫌いなく雑食でなければ生きていけない。二本足歩行を身につけると、遠くが見渡せるし、手が使えるので食糧を楽に運べ家族や仲間を養えるなど人類のノウハウが生まれたという。
生物進化の歴史をたどると、心地よい生き方をいつまでも守っているだけでは進化しないようだ。
企業でも、やむを得ず打った最後の一手が画期的な成功を収めて躍進することはよくあることだが、そればかりをあてにするわけにはいかない。


木村資生のことば 「私がいちばんのサバイバル・オブ・ザ・ラッキエストだった」

木村資生の本  生物進化を考える (岩波新書)

           分子進化学入門