おかしいと考える   

ルドルフ・ディーゼル

きょうはドイツの機械技術者、ディーゼルエンジンを発明した ルドルフ・ディーゼル(Rudolf Christian Karl Diesel )の誕生日だ。1858年生誕〜1913年逝去(55歳)。

フランスのパリで生まれた。ドイツに渡りミュンヘン理工科学校で、冷凍技術の確立者であるリンデから、熱機関の基礎理論を学ぶなど、当時の最先端技術を学び、開校以来の素晴らしい成績で卒業した。在学中から若い発明家としてクルップ社と新エンジンの開発に挑んだ。

熱効率の高いエンジンの実現に関心を持ち、蒸気の代わりにアンモニアを使う機関の発想を経て、1892年34歳の時、ディーゼルエンジンの理論的考察「今日知られている蒸気エンジンと内燃エンジンに取って代わる合理的熱エンジンの理論と設計」を発表し、翌年ドイツの特許をとった。
この論文には、燃料と空気を別々に燃焼室に送り込み、混合気の発生と共に燃焼させる「不均一混合」の原則、爆発に点火プラグを使わない「自己着火(圧縮着火)」の原則というディーゼルエンジンの基本原理が書かれている。
1894年36歳の時、初めて安定したディーゼルエンジンを開発し運転に成功した。その後改良を加え、1897年に初めて商品化し、アウグスブルクで生産を始めた。こうして、ガソリンエンジンよりも熱効率がよく、耐久性に優れるディーゼルエンジンの歴史が始まった。

ドイツは産油国ではなくガソリンは高価で、その点 安価な重油を使用出来、信頼性の低い電気点火を使用しないドイツ向きの画期的なエンジンだった。
彼は一貫して、自分の発明が世界の人々の利益になるように、誰でも少額の特許料で新技術の使用を許した。このことは人類にとっては幸運となった。
彼が商才にたけていたら、莫大な財をなすことも容易だっただろう。

1900年代初頭のドイツ帝国海軍は、チャーチル率いる大英帝国海軍に追いつこうと必死の努力をしており、対抗手段として潜水艦に目をつけ、その主機関としてディーゼルエンジンが最適と判断した。しかし英国でも同様の判断をしていた。
1910年代になり、独英関係はますます緊張し、ドイツ帝国海軍はディーゼルに、すべての特許を国家に帰属させるように要求したが、彼は拒絶した。

ディーゼルは1913年55歳の時、イギリス行きの汽船に乗った後、船から姿を消した。そして2週間後オランダのトロール漁船の網に一つの遺体が掛かった。それはディーゼルの死体だった。
状況から推察出来ることは、イギリスに特許ノウハウをを渡すことはドイツにとって“利敵行為”と見なし、ディーゼルを“売国奴”としてドイツ秘密警察が殺害した、と言うことだが、確たる証拠は無く誰も罪に問われることは無く、「イギリス海峡に投身自殺した」ということになっているようだ。

ディーゼルエンジンの出現により、世界は大きく変革することになるが、ガソリンエンジンと同様、石油系燃料を燃やして動力を得る物であり、永久に使用することはできない。出現から100年以上経つというのに、いまだに使用し続けているというのはおかしいと考えるべきではないか。

企業においても、年功序列や終身雇用、ピラミッド型組織などのすぐれたシステムはなかなか変え難いものであるが、これをうまく変えることができた企業が生き残るということなのだろう。
そのためには、経営者を始め全社員の意識が変わる必要がある。

ガソリンエンジンディーゼルエンジンの違い★ 
「空気(気体)を圧縮すると熱くなる」という自然の法則を応用して、燃料に点火して動くのがディーゼルエンジン。エンジン内に吸入された空気は、圧縮行程で体積が15分の1〜20分の1になるまで圧縮され、この時の圧縮空気の温度が500℃〜600℃で、この熱がシリンダ内の燃料を自然発火させ、燃焼させてエンジンが回る。
そのため、ディーゼルエンジンには、ガソリンエンジンのようにスパークプラグや点火装置が無い。また、着火(ディーゼルは点火とは言わない)やエンジンの出力コントロールは、燃料噴射の制御で行う。
構造が簡単で故障しにくい。熱サイクルから見てもムダが無いのが、ディーゼルエンジンの特徴。
ちなみに、ガソリン自動車を発明したゴットリーフ・ダイムラーの誕生日は、昨日3月17日だ。

           ☆ディーゼルエンジンガソリンエンジン 
燃 料         軽油重油      ガソリン 
着 火         空気圧縮による着火  電気花火による着火 
エンジン質量/馬力   大          小 
エンジン価格/馬力   高い         安い 
熱効率         良い(30〜40%)   悪い(22〜28%) 
経 費         安い         高い 
火災の危険度      低い         高い 
騒音・振動       大きい        少ない 
冬季の始動性      やや悪い       良い 

★トラックやバスは、なぜディーゼルエンジン?★ 
一番の理由は、エネルギー効率が他のエンジンに比べて高いということ。ディーゼルトラックの耐用年数は10年、走行距離で100万kmと言われている。この間にかかるトラックのライフ・コストのうち実に75%が燃料代だ。安価なコストで物や人を運ぶためには、その動力源として効率性が一番重要になる。
また、ディーゼルエンジンは構造的に、ガソリンエンジンのような瞬発性能は期待できないが、粘りのある力を発揮し、多くの荷物を載せて走るクルマの性格に合っている。
ディーゼルは、エンジンの大型化によるエネルギー・ロスも少なく、構造的にもトラックやバスに利用するのに最適なエンジンだ。



ディーゼルの本
  ディーゼルエンジンはいかにして生み出されたか
  エンジンからクルマへ―オットー・ダイムラー・ベンツ・ディーゼル・ボッシュ